「協働企業 情報交換会」開催報告

「協働企業 情報交換会」開催報告


7月に実施したキックオフからの活動の進捗と今後の進め方を報告する情報交換会を12月2日に開催しました。今回の目的は、協働企業および参加を検討されている企業に、活動への関心や参加意欲を高め、海ゴミ問題解決・海洋環境の保全への取り組みを加速することです。
当日は廃漁網を活用した素材・商品づくりに取り組むリファインバース加志村竜彦氏、コクヨ井田幸男氏に現状の成果と課題を共有いただくと共に、海洋プラスチックゴミ問題に詳しいNHKエンタープライズ エグゼクティブプロデューサー堅達京子氏を招聘し、「報道から視る企業の海ゴミ削減活動について」をテーマにご講演をいただきました。協働企業13社のほか、オブザーバーとして住江織物、三菱地所の方々に参加いただきました。なお、当日はオンラインで同時配信しました。

Project for the Blueの進捗報告と今後の展望(AFB堀口)


・AfBの活動の位置づけを改めて確認し、これまでの活動と今後の活動方針を報告した。
Research:リファインバースと実施している漁網に関する調査結果を報告
国内の漁網マーケットサイズ、回収や廃棄上の課題、再利用が進まない要因及び、確認された課題に対する今後の対応の方向性(目指す姿)を共有
Alliance:リファインバース&住江織物による、回収した廃漁網を活用した布帛とそれらを活用した商品開発について
両社による廃漁網を活用した布帛の開発と、その布帛を使用した取り組みとして、コクヨ、豊岡鞄、ルートートとの取り組みが進行中であることを共有
Education:海とのつながりを実感する仕掛けづくりの施策として実施予定の「海ゴミまで00kmプロジェクト」の進捗を報告。川の流量や流速のデータを使い、ある地点から何日、何キロメートルで海ゴミになるかをシミュレーションできる地圏環境テクノロジーのシステムを紹介した
また、AfBの取り組みの特長として、「トレーサビリティの確保」「効果測定ができること」を重視するということが強調された

海洋保全に貢献する「技術・商品・システム」の紹介
廃漁網を原料としたトレース可能な再生素材づくりの挑戦(リファインバース/加志村氏)


・廃漁網を再生したナイロン素材については、「REAMIDE®(リアミド)」という自社ブランドを立ち上げ、開発、販売を強化している
・ 現在試作中の住江織物とのコラボの布帛は経糸(バージンのポリエステル100%) x 緯糸(廃漁網を再利用したナイロン50%+バージンのナイロン50%)
・ 今後強化すべきこととしては漁網の回収量を増加させること。再生ナイロン製品の品質基準を定めること。繊維だけでなく、成形品の開発や商流づくりの強化が挙げられた

廃漁網(新素材)を用いた商品づくりへの挑戦(コクヨ 井田氏)


・現在、社内で進行中の3つのプロジェクトについて福島テレビから取材をうけた際のビデオを紹介
・ 廃漁網を活用した再生素材(布帛)を活用したNeo Critz(ペンケース)の制作に挑戦。試作品製作時に抽出された課題として、品質基準の設定、顧客への説明責任の範囲、品質のロット割れなどを共有
・ 廃漁網を活用したアップサイクル商品を販売する際、どの層の顧客に、どのような価値を訴求するかを検討中
・ 過去に取り組んできた「環境配慮が十分でない商品はカタログに×印を明示する『エコ✖』活動」や「スターバックス社が廃棄する牛乳紙パックを原料にしたスターバックスのロゴ入りノートの制作」などと、現在挑戦している廃漁網由来の素材を活用したモノづくりをしっかり訴求し、消費者に近いメーカーとして、今後も上流企業とコラボしながら消費者に価値を届ける存在でありたい
・ 今までのコクヨ内の思考様式から離れた考え方で、モノづくりをしていく必要があり、そのためにも協働企業さんとのコラボが大切だと考えている

講演 NHKエンタープライズ エグゼクティブプロデューサー 堅達(げんだつ)京子氏
テーマ:報道から視る企業の海ゴミ削減活動について


・「プラスチックごみと地球温暖化の密接な関係が世間に伝わっていない」という課題意識をもとに、これまで多くの番組制作を手掛けてきた
・ プラスチック自体が問題なのではなく、その生産量が1950年代に比べ200倍と作りすぎたこと、海に流出してしまうその仕組みが問題である
・ 海ゴミと気候変動の関わりについては、海ゴミからメダンガスやエチレンガスが発生しているということが約2年前のハワイ大学の研究でわかってきている
・ プラタネタリー・バウンダリーやIPCCの報告書が示すように、気候変動への対応について、人類は現在既に後戻りできないタイミングにある
・ 企業の取り組みにおける大切なポイントとして以下の点がある
✓LCAと透明性・トレーサビリティ・安全性・科学的エビデンスを基にした取り組み
✓いかに人を(消費者を)動かすストーリーが描けるか
✓パートナーシップ 特に以下の3者との協働が有用
①スタートアップ  ②若者  ③環境NGO
・ 企業だけでなく、行政においても、欧米はグリーンリカバリーにかける予算の額が莫大であり、法規制整備などが進んでいて日本は2-3周回遅れの状況
・ 先進的に取り組んでいるEUでさえ、サーキュラーエコノミーの実現には25年かかるため、中長期のロードマップを描き、着々と取り組みを進めている。日本は難しい問題に対して、すぐに諦めがちだが、中長期のロードマップを敷き、一歩一歩取り組みを進めていくことに期待する