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豊かな海を次世代に。協働企業運営「tlass SEA CELLAR」が海底熟成ワイン 2025 2nd Editionを展開

2025.06.19

海底熟成ワインやトラベルバッグの購入が海洋環境保全活動に役立てられる—。

Alliance for the Blue(AFB)は、廃漁網を活用した商品「Product for the Blue(PfB)」の売上の一部や、当社の活動に賛同する企業からの寄付「Support for the Blue(SfB)」を通じて、海のゆりかごと呼ばれる「藻場」の再生を目指す取り組みを支援しています。

Support for the Blue(SfB)」の主要企業が運営する、海底熟成セラー事業「tlass SEA CELLAR(トラス・シー・セラー)」が、2025年6月19日、鹿児島県瀬戸内町で、2年目となる海底熟成ワイン”2025 2nd Edition”の引き揚げを行いました。

tlass SEA CELLARは、世界自然遺産・奄美大島の豊かな海で、海底熟成調査を基に、お客様からお預かりしたワインをはじめとした酒類を自然環境に寄り添い“サステナブルに海底熟成”させる、世界でもまだ希少な海底熟成セラー事業です。今年1月に自社生産とお客様からお預かりしたワインを海底へ設置し、約半年かけて海底で熟成を施しました。

ワインセラーも海のゆりかごに

海底熟成ワインが貯蔵されているのは、奄美大島と加計呂麻島の間に位置する穏やかな大島海峡です。引き揚げ作業では、瀬戸内町の漁師さんたちが海中に潜り、漁船でも作業できるようにコンパクトに設計されたラックを一台一台手作業で引き揚げていました。

作業を担っていただい瀬戸内町漁協の「池田丸」の出航
漁業関係者や、瀬戸内町水産観光課の方が作業をお手伝いしてくださいました

海底に沈められているセラーは、AFBの協働企業・岡部株式会社の海洋事業部と共同開発したもので、魚礁や藻場礁の機能を基盤に海洋環境に合わせて独自設計されています。海底に設置されたセラーは、現在、魚や海中生物の住処になり、さらに隠れ場所や産卵の場にもなっており、時間の経過とともに魚礁や藻場礁としての役割を果たし、海の生態系を守る役割も担っています。

また、引き揚げられたワインボトルには、フジツボや海藻をはじめとした多くの海中生物が付着しており、大島海峡の豊かさが伝わってきます。

 

多様な生物が生まれ・育つ「海のゆりかご」を守る

ただ、そんな素晴らしい環境にも、地球温暖化の影響は及んでいます。

瀬戸内町を含む全国の沿岸地域では、海水温の上昇によって、藻食動物であるウニやアイゴ、イスズミなどの摂食活動が活発化したり、海藻を食べ尽くすことで、「海のゆりかご」や「海の森」と呼ばれる藻場が消失し続けているのです。

同町水産観光課水産振興係長の禧久 幸太さんも、その状況を深く危惧しています。「海水温の上昇で魚種の変化が生じていたり、海藻類の減少などによって魚が住みづらくなっていることから、年々漁獲量は減り続けています。だからこそ、魚の産卵場所になったり、CO2を吸収したりする海藻を増やす取り組みは不可欠です」

海藻藻場を形成するホンダワラ類は、1年ごとに生え替わります。波の流れで切れた藻(流れ藻)は魚の産卵場になるほか、海底に沈殿することで吸収した二酸化炭素を閉じ込める役割を担っています。

瀬戸内町水産観光課水産振興係長の禧久幸太さん

現在、町は漁業者と協働して、白浜、清水、加計呂麻島の深浦といった藻場の再生に適していると判明している3海域で、藻場の育成に積極的に取り組んでいます。

藻場消失の大きな要因である食害を防ぐことを目的に、囲い網や仕切り網を設置した箇所では、海藻の成長が確認されています。これらを毎年継続し、着実に増殖をしていくことで、かつて繁茂していた豊かな藻場の再生を目指しています。

禧久さんは、期待を込めて話します。「漁業関係者だけでなく、AFBやtlass SEA CELLARを筆頭にさまざまな人や企業のご支援も得て進めていく。さらには、単なるボランティア活動ではなく、経済活動として地元を盛り上げていく必要があると思っています」

AFBは、こうした藻場再生について地元漁業関係者や地元自治体、企業で協働しながら保全に取り組む「ネリヤカナヤの会」*に参画・支援しています。そして、今後こちらで作られた「藻場の再生モデル」を全国に展開する計画です。

※ネリヤカナヤは奄美の方言で、海のかなたの楽園という意味があります。

海底熟成ワインが藻場再生に貢献

tlass SEA CELLARの海底熟成ワインをはじめとした、販売収益の一部をAFBへ寄付いただいています。海の恵みを活用した海底熟成ワインが、巡り巡って藻場の再生につながる。そんな「サステナブル」な取り組みです。

引き揚げ後に行われたワインのテイスティングパーティーでは、引き揚げ作業を行ってくれた漁師さんや、瀬戸内町の皆さんも参加し、海底熟成前後のテイストの違いを楽しんだり、海の豊かさについて語りあったりする、とても特別で新しい可能性を感じる時間となりました。

tlass SEA CELLARの事業主である森谷 悠以さんは話します。

「今回、瀬戸内町役場や漁協、瀬戸内町の皆さまのお力を借りて、無事に海底熟成ワインを引き上げることができました。

この取り組みは、単に海底熟成ワインという商品を作ることが目的ではありません。海底熟成ワインを創造する活動を通して地域の方々とのつながりを深め、産業の育成や町全体を元気にすること、さらに東京など島外の人にも美しい瀬戸内町の海と町の魅力を知ってもらうことを目指しています。

このワインを気軽に楽しんでいただける場として、瀬戸内町清水のビーチフロントにワインバー(tlass SEA CELLAR BAR Beach Club)も開設しています。多くの方々にこの海底熟成ワインを味わっていただき、瀬戸内町の豊かな自然を感じてもらえたら嬉しいです。そして、この活動が地域をより豊かにし、島外の人にも瀬戸内町の魅力を伝える架け橋となることを願っています」

また、廃棄漁網を活用した生地を使用し、トラベルグッズを開発している協働企業・株式会社Movedのトラベルブランド「Aww(アウ)」の石田めぐみ代表も、tlass SEA CELLAR BAR Beach Clubを訪問していました。

Awwは、廃棄漁網の再生生地を使った「Aww For the Blue Collection」を制作し、売り上げの一部を寄付いただいています。

石田代表は、「 私たちにはSNSでつながっている旅好きなファンが数多くいます。海のことが好きな人、環境問題に関心のある人も多いので、藻場再生の取り組みやその価値を感じてもらうためにも、ぜひ現地に足を運んでほしいです。

そして、『Aww For the Blue Collection』の売り上げの一部が、この美しい海を守る活動に役立てられているという価値を体感していただけたら嬉しいです」と呼びかけていました。

今回ご紹介したtlass SEA CELLARやAwwのように、海をフィールドにした人やプロダクト、産業と環境の新しいつながりが少しずつ広がっています。 AFBでは、今後も地域や協働企業と手を取り合いながら、この取り組みをさらに育て、広げていきたいと考えています。

また、「ネリヤカナヤの会」や協働企業である岡部株式会社と力を合わせて藻場再生への参画・支援を行い、地域に根ざした活動を続けていきます。

AFBが目指す、豊かな海を次世代に残していけるように、これからも一歩ずつ、歩みを進めていきます。

◾️鹿児島県瀬戸内町の取り組み

奄美大島の最南端に位置している瀬戸内町は日本で唯一の海峡を持ち、穏やかで透明度の高い海が特徴です。そんな海洋資源が豊かな町では、登録に先駆けた2021年7月7日に「ゼロカーボンシティ」を宣⾔しています。2050年までに⼆酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにすることを目標とするもので、海洋資源の再生とブルーカーボンの促進や、再生可能エネルギーへの転換を進めています。

参考:

Product for the Blue(PfB)とは?

Support for the Blue(SfB)とは?

世界に各48本。“奄美大島の海が育てた”熟成ワイン、2nd Edition登場。

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